アブリスボ(妊婦に対するRSウイルスワクチン)について
アブリスボとは?
2025年5月より、当院でもアブリスボへの対応を開始いたしますのでご紹介いたします。
アブリスボは、妊娠24〜36週の妊婦に接種するRSウイルスに対するワクチンで、母体でできた抗体をお腹の中の赤ちゃんに移行させて出生後に効果を発揮します。
低月齢の赤ちゃんがRSウイルスにかかると重症化しやすいことがわかっています。
この重症化しやすい低月齢の時期に、赤ちゃんを守る有効な方法として、アブリスボの接種があり、日本産婦人科学会などから推奨されています。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス感染症は、RSウイルスによる呼吸器の感染症です。
生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスに少なくとも1度は感染すると言われ、その後も繰り返し感染します。
症状としては、発熱・鼻水など軽い風邪症状から重い肺炎まで様々です。大人にとっては鼻風邪の一種とも言えますが、
低月齢の乳児に感染した場合、細気管支炎・肺炎など重症化することが多くなります。
RSウイルスはウイルス感染症であるため、特効薬はなく、低月齢の間は特に、予防が重要と言えます。
手洗いやマスクといった飛沫・接触感染対策が有効ですが、予防の方法の追加の選択肢として、アブリスボが登場してきました。
アブリスボの効果
アブリスボは、妊娠32週0日から36週6日の間に接種することで、出生後の乳児における重症RSウイルス感染症の予防が期待されます。
日本人も参加している臨床試験(MATISSE試験)では、以下のような有効性が示されました。
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重度の下気道疾患:
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出生後90日以内:81.8%減少
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出生後180日以内:69.4%減少
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RSウイルス関連の入院:
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出生後90日以内:67.7%減少
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出生後180日以内:56.8%減少
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これらの結果は、アブリスボが乳児の重症RSウイルス感染症や入院リスクを有意に低減することを示しています。
接種方法と副反応
在胎24週~36週(特に32週~36週6日が推奨)に1回、0.5ml 筋肉注射です。
任意接種となるため、自己負担が発生します。当院での接種料金は30000円(税込み)です。
接種後の主な副反応として、痛み、頭痛、筋肉痛が報告されていますが重篤な副反応は稀です。
他のワクチンとの同時接種
妊婦に推奨されるそのほかのワクチン(3種混合ワクチン、コロナワクチン、インフルエンザワクチン)との同時接種も当院では対応します。
同時接種で百日咳の抗体価の上昇が小さくなる可能性が示唆された報告があるため、添付文書上、3種混合ワクチンとの同時接種は要注意となっていますが、
抗体価の低下が実際の予防効果に影響を与えるのかは不明ですし、機序も不明、同時接種を避けるとしたときの適切な間隔も不明です。
そもそも報告で使用された3種混合ワクチン(Tdap)と当院で扱う3種混合ワクチン(トリビック)とは種類が異なるため、同じことが起こるかはわかりません。
同時接種が辛いなどの事情がなければ、同時接種で通院回数を減らした方がメリットが大きいと私は考えています。
アメリカCDCも同時接種してよい(リンク先P24)としています。
接種にあたっての注意事項
・産科の主治医に、接種してよいか、事前にご確認ください。産科で接種できる場合はそちらを優先するようお勧めいたします。
・接種をご希望の方は、診療時間内にお電話にて予約をお取りください。ワクチンは取り寄せになります。2週間程度の余裕をもって、ご予約ください。
ワクチンは高額で返却ができませんので、キャンセルは不可とさせていただきます。
・接種記録をお子さんの母子手帳に残してください。出生後のワクチン接種や診療方針に、影響がある場合があります。