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『はっちこどもクリニックの目的地』

[2022.01.12]

「人生とは旅である」

サッカー元日本代表の中田英寿さんが引退するときに語った言葉です。

「クリニック運営も、一つの旅である」

いま私は、そんな風に思っています。なんとなく船旅のイメージです。

来るべき出港にむけて、“はっち号”の準備を進めています。

船長として、船をデザインし、備品を整えて、人を集めようとしています。

 

でも、どんな準備より大切なものは、『目的地』を決めることです。

旅の目的が、商売なのか、友人に会いに行くことなのか、新大陸を発見することなのか・・・。決まらなければ、準備を整えることはできませんし、船員だって戸惑うでしょう。なにより自身が岐路に立たされた時、正しい決断をすることができません。

クリニックがどこへ向かっているのか、どんな思いで診療しているのか、はっきりしていたほうが、患者さんにとっても安心だろうと思います。

それで開業を思い立ってから長い間、『目的地』を考え続けていました。

ずっと頭にあったのは、自身の子育てにおける、予想を超えた困難さでした。自分が想像していたより、世の中の親御さんたちはずっとずっと、子育てに苦労していると痛感させられました。そんな思いがありましたので、「子育てをする親御さんたちを全力で応援する」のを最初に『目的地』として考えていました。

 

そんな折、一つのニュースを耳にしました。

「こども庁」が「こども家庭庁」へと名称変更する、というものです。

実際のところ、中身がよければ、名称はどちらでもよいとは思うのですが、

私の受けた印象では、

「こども庁」が直接、こども中心の支援を行う印象があるのに対して、

「こども家庭庁」は家庭に一定の役割を期待する、責任を負わせる印象があります。

 

思い出すのは15年以上の診療経験のなかで出会った、様々な事情を抱えたこどもたち、親御さんたちです。

<自分が親だったらこの子を心から愛せるだろうか。>

<このご両親にお子さんを育てる余力はあるのだろうか。>

<自宅ではどれだけ大変な生活をしているのだろう、想像するのも辛い。>

<この子の親になって、親御さんはどれだけの夢を失ったのだろう。>

失礼な思いの数々だとは思いますが、こう思ったことは一度や二度ではありません。

 

適切な支援によって、多くの家庭・多くの子育ては確かになんとかなります。

でも、家庭を支援しその頑張りに期待するだけでは、救いきれないお子さん、親御さんが出てくる。そしてそういうことは、誰の責任でもなく、また、誰の身にも、ある確率で起こりうる。いままでの経験から学びました。

 

ですから「こども庁」はやっぱり「こども庁」のままであってほしかったし、

当院の『目的地』は、“ご家族の応援”より、一歩先にないといけない、と思いました。

 

 

『こどもをみんなで育てる社会』

今、私に見えている『目的地』です。

 

日々の診療に反映させるなら、

“あらゆる患者さんを自分のこどもだと思って診る“ということだと思います。

 

これからの数十年、日本の人口は減り続け、高齢化が進みます。

しかし、日本がなくなってしまうことはないと思いますし、

人口構成も少しずつ変化していきます。出生率は社会情勢によって、意外と変化します。

 

私が引退を考えるころ、少しでも前向きにこどもを産み、育てることのできる世の中になっていることを目指して、“はっち号”を準備し、出港させたいと思います。

                                  和田 芳雅

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