生後6か月~4歳のお子さんへの新型コロナワクチン接種(乳幼児接種)について
10月末から生後6か月~4歳のお子さんへの新型コロナワクチン接種(乳幼児接種)が可能となりました。そろそろ自治体から接種券が届き(一部自治体によっては接種券が申請制のようですのでご注意ください。)、接種を悩んでいる方も多いかと思いますので、ワクチン接種に関する情報や、接種したほうがよいかについて、簡単にまとめたいと思います。
【接種するワクチン】
ファイザー社製
生後6か月~4歳専用に調整されたワクチンで、mRNA量は3μg/回です。
(5~11歳のワクチンは10μg/回、12歳以上は30μg/回です。)
オミクロン株対応ではなく、従来型のワクチンですが、オミクロン株流行期にも効果があったことが確認されています。
【接種回数・期間】
3回で1セットです。
初回から3週間後に2回目、2回目の接種から8週間経過した後に3回目を接種します。初回以降、3回目接種までに5歳を迎えたとしても、生後6か月~4歳のワクチンを接種します。後述しますが、できる限り3回しっかりと打ったほうが効果は高いと思われます。
接種を行う期間は現時点では、2023年3/31までとなっています。3回打つには3か月程度かかりますので、接種するならば早めにスケジュールを計画する(遅くとも2023年1/13までに接種開始する)必要があります。
【同時接種】インフルエンザワクチンとは同時接種が可能です。他のワクチンとは2週間の間隔が必要です。
【接種方法】成人と同じく、筋肉注射です。年齢、筋肉量によって、上腕か大腿に打つことになります。小児科医が筋肉注射を行うことは珍しくはなく、これについて特段の心配は不要です。大腿に接種することについても、特段の心配は不要です。
【有効性】
3回接種することにより、オミクロン株BA.2流行期においても、生後6か月~4歳全体で73.2%、生後6か月~23か月児で75.8%(95%CI 9.7~94.7%)、2~4歳児71.8%(95%CI 28.6~89.4%)の発症予防効果が得られたと報告されています。これまでの他の年齢におけるワクチンの有効性の知見からは、重症化予防効果は発症予防効果を上回ることが期待されます。ただし2回接種だとオミクロン株には十分な効果が得られなかったようです。
【副反応】
生後6か月~2歳の児においては、1~3回の接種において、発熱は約7%、食欲低下や眠気、過敏性(不機嫌)などが数十%見られています。しかし、これらの頻度はワクチン成分を含まないプラセボを接種した時とほとんど変化はありません。ワクチンの成分に由来した副反応は少ないと言えます。心筋炎や死亡例は見られませんでした。
【接種すべきか】
日本小児科学会は、2022年11/2に、「日本小児科学会は生後6か月以上、5歳未満のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します。」と提言しています。
私もこれに賛同します。
この世代の小児にもワクチンを推奨するようになった理由として大きいのは、「こどもは重症化しない、とは言えなくなった」ことだと思います。
2022年9月14日に国立感染症研究所より、新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報)が公開されました。
2022年1月1日から2022年8月31日までの期間で、新型コロナ罹患後の20歳未満の死亡例は41例あり、状況を調査できた32症例のうち、明らかな内因性死亡(外傷を除く疾病による死亡)と考えられたのは29例あったとの報告です。
小児死亡例の年齢分布としては、0歳が8例、1~4歳が10例、5~11歳が17例、12歳~19歳が5例でどの年齢層にも存在しています。
また、17人(41%)には基礎疾患がありませんでした。
特に基礎疾患のない小児であっても、新型コロナウイルス罹患により死亡する可能性はあるとわかりました。
2009年の、当時の新型インフルエンザの流行での小児死亡例が41例と報告されていますので、これと比べても、あまり変わらないことになります。そのほかの年のインフルエンザの小児死亡数も概ね数十人です。
【まとめ】
新型コロナウイルスの2022年夏の流行では、小児の患者数が急増し、それに伴って、後遺症を残す例や死亡する例も見られるようになりました。その規模は例年のインフルエンザと比しても少なくないものでした。
今後の流行においても同様の事態になる可能性は十分にあり、さらにインフルエンザとの同時流行の恐れも出てきています。
新型コロナ、インフルエンザ、両方のワクチンを接種し、流行に備えることをお勧めします。
乳幼児におけるファイザーの新型コロナワクチンは成分量を減らしており、副反応は少ないと思われます。ただし、3回打たないと効果が十分得られない可能性があります。
接種期間も現時点で限られており、早めのスケジュール調整が必要です。
【最後に一言】
様々な価値観、考え方があり、ワクチン接種は強制ではありません。
見方を変えれば小児は罹患しても99%以上死亡しないのも事実です。
ただ、罹患したときに、誰が重症化するか、死亡するかはわかりません。
小児科医師として、ワクチンで防げる病気で死亡したり、後遺症を残す子が出るのは一人でも減らしたいと思います。