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HPVワクチンキャッチアップ接種が始まっています!

[2022.04.09]

平成9年度生まれ~平成17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)の女性へ。HPVワクチンキャッチアップ接種が始まっています!

私が医師になって15年以上経ちますが、「キャリアのなかでもっとも残念だった出来事は?」と聞かれたら、迷わず、「HPVワクチンの接種率が低下したこと」と答えます。
2位以下はあまり思い浮かびません。それくらい、明確で、重大な過ちであったと思っています。

 

HPVワクチンはヒトパピローマウイルス(HPV)感染によっておこる、子宮頸がんや肛門がん、咽頭がんなどを防ぐ効果のあるワクチンです。
日本では毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約2900人の女性が死亡しています。
HPVに感染する前にワクチンを接種することにより、子宮頸がんや子宮頸がんの前がん病変が大きく減らせることがスウェーデンなどから報告されています。ワクチンと検診を積極的に進めたオーストラリアでは、2028年には子宮頸がんの患者はほとんどいなくなるだろうとの推測がされています。死亡者数が漸増している日本とは大きな隔たりがあります。

 

日本では2013年4月に定期接種化されましたが、接種後に生じた“多様な症状“が、ワクチンの副反応であるかのように大々的に報じられ、安全性への不安の声が強くなりました。
結果として、定期接種でありながら、積極的な勧奨(対象者に対して個別に案内票などを送付することなど)を一時差し控えるという矛盾した状況となりました。
70%あったワクチンの接種率は1%以下まで低下しました。

 

しかし、世界中の様々な研究で子宮頸がんワクチンが様々な神経疾患の発症率を上げないとの報告がなされ、日本においては2018年「名古屋スタディ」と呼ばれる研究によって、HPVワクチンの接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を有する方が一定数、存在し、発症率に有意な差がないことが明らかとなりました。

 

実際に小児科医として働き、思春期の患者さんに対応していると、ワクチンの接種とは関係なく、「力が入らなくて歩けなくなった」「体が意に反して勝手に動く」「体のあちこちの痛みがとれない」といった患者さんに出会うことは極端に珍しくはありません。(一般の方にとっては、ほとんど見ることのない症状なので、なかなか信じるのは難しいとは思います。)

 

HPVワクチンの安全性、有効性が確認されて以降、多くの医師が積極的な勧奨を再開するよう、厚生労働省や自治体、メディアなどに呼びかけました。例えば日本産科婦人科学会は、これまでにHPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を複数回にわたり発表してきました。
WHOは、「日本において、若い女性が本来防げるはずのHPV関連癌のリスクにさらされたままになっている。不十分なエビデンスにもとづく政策決定は、実害をもたらす可能性がある」と日本の状況を名指しで非難しました。
また有志の医師たちによる、『みんパピ!』などの啓蒙活動も行われるようになりました。

 

これらの数年にわたる活動で、ようやく風向きが変わっていったように思います。

 

そして、2021年11月に専門家の評価により、「積極的な勧奨を差し控えている状態を終了させるのが妥当」とされ、原則、2022年4月から他の定期接種と同様に、個別の勧奨を行うこととなりました。

 

積極的な勧奨が差し控えられた後、上記年代の女性においては、接種率が非常に低く、この間に接種を積極的に行ってきた国に比べて、子宮頸がんの患者や子宮頸がんによる死者が多くなることが予想されています。

2020年スウェーデンの報告では、HPVワクチンは17歳以前(性交渉開始前の世代)の接種で最も有効率が高いですが、キャッチアップ世代においても子宮頸がんのリスクを減らすことが確認されています。

 

該当する年代の女性には、HPVワクチンのキャッチアップ接種をお勧めします。

詳しくは、厚生労働省ホームページをご覧ください。

今後は男性においても定期接種化がなされることを期待しています。

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